新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚障害について


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で特徴的であるとされた上気道炎症状に先行して急性に発症する嗅覚・味覚障害は、現在主流となっている変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)では減少しています。一方で、COVID-19罹患後に後遺症として嗅覚・味覚障害を訴える患者さんも一定数存在し、その多くが異嗅症、異味症を自覚し食欲の低下から身体面、精神面の不調をきたします。現時点でCOVID-19により発症し長期間持続する嗅覚・味覚障害に対する治療法は確立しておりませんが、鼻副鼻腔炎が存在する場合、ステロイドの全身あるいは局所投与などで改善する場合もあります。また鼻副鼻腔に異常を認めない場合、嗅神経性嗅覚障害とし通常の感冒後嗅覚障害治療に準じて、当帰芍薬散や嗅覚刺激療法が有効である可能性があります。味覚障害患者で血清亜鉛が低値を示す場合は、亜鉛製剤投与の適応と考えられます。

当院における新型コロナ後遺症 嗅覚・味覚障害の治療について

I 対象とする患者

 新型コロナウイルス感染後、嗅覚障害が残り不安に思われる方も多いかと思います。発症から2週間で60〜80%の方は治療なしで改善すると言われています。当院では発症日より1ヶ月経過しても改善しない方を対象に嗅覚障害の治療を行っております。

II 診療の流れ

@嗅覚障害の方
  • 日常のにおいアンケートの回答
  • 鼻・のどの状態の確認
     鼻内の診察(ファイバースコープなどを用いて)臭いの通り道(臭裂)に異常がないか、副鼻腔炎などの疾患がないか確認。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が認められた場合は嗅覚回復の妨げになるため併せて治療が必要となります。
  • においを感じる力の検査
     アリナミンという薬剤を注射してから、においを感じるまでの秒数を計ることで嗅覚の状態がわかります。
A味覚障害の方
  • 血液検査にて血清亜鉛の値を調べます。
III 治療

 ビタミン剤漢方薬を処方します。また、嗅覚障害の方にはステロイドの点鼻薬を、味覚障害の方(血清亜鉛が低値の方)は亜鉛製剤を処方します。
 治療による改善が不十分な方には、自宅での嗅覚トレーニング・リハビリとして「嗅覚刺激法」を指導します。
  • コロナウイルス感染症については、まだ未知のことが多いですが、上記のような治療によって、ゆっくりですが改善する人が増えてきています。根気よく治療に取り組んでいきましょう。

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