正しい耳掃除の仕方


 子供の耳かきをして、鼓膜や外耳道を傷つけたり、または、耳かきをすると気持ちがいいので、毎日やって、耳から水が出るようになったなど、耳掃除によるトラブルをよく聞きます。耳かきは単純な行為だけに自己流の人が多いはず。正しいやり方を学んで、安全に行いましょう。

1.耳の構造と耳あかについて

 耳穴の入り口から鼓膜までの距離は、約3cm。外耳道はS字状に曲がった形をしていて、その手前3分の2は軟骨部と呼ばれています。

 入り口から3分の1の所に耳あかの元となる油を分泌する耳垢腺(じこうせん)があります。日本人の6割はこの腺が少ないのでカサカサした耳あか、4割がベトベトタイプです。一般的な耳かき棒が有効なのは、カサカサタイプだけで、ベトベトした耳あかは綿棒でふきとるか、耳鼻科に来る以外、取ることが困難です。白人や黒人はこの割合が反対のため、欧米ではあまり耳かき棒は売っていません。

2.正しい耳掃除の仕方

 自分で自分の耳掃除をする時は、綿棒を使うのがいいでしょう。耳かきで耳あかを奥へ押し込んでしまうことも多く、決して奥まで掃除しようと無理をしてはいけません。人の耳を掃除する時は、ぎゅっと耳を後ろに引っ張ってから上に移動させると、耳の穴が真っすぐになって奥まで見やすくなります。ただ、「あれもこれもとろう」は禁物です。耳の穴は骨の上に薄い皮膚がかぶさっているだけで、ガリガリやると目に見えない傷がつき、外耳炎になりやすくなります。幼少児は危険ですので、必ず、耳かき棒より綿棒を使いましょう。十分よく見える範囲だけにとどめ、嫌がったり、多量になって耳掃除が難しい場合は、耳鼻咽喉科にご相談ください。

3.人はなぜ耳かきをするか

 答えは、「気持ちがいいから」です。耳の穴には、快感を生じさせる迷走神経が走っており、耳かきで触れれば触れるほど、気持ちがよくなります。一方で、耳を触ると咳が出るタイプの人も2割ほどいます。

4.耳掃除は必要か?

 鼓膜の表面から耳の入り口に向かって常に細胞が動いていて、耳あかを押し出そうとする力が働いています。原理から言えば、耳あかは自然に耳からこぼれ落ちます。1回の所要時間は二〜三分、月1回もやれば十分です。ただ中には、外耳道の形が極端に狭かったり、湿疹や外耳炎やカビが加わって耳あかが多量になることもあります。このような場合は無理せず、耳鼻科専門医を受診してください。どうしても耳がかゆくなった時は、耳の入り口の前の出っぱりの耳珠を抑えて揺らしたり、耳を冷やしてみてください。耳かきをすると余計にかゆくなります。耳かきは至福の時間ですが、至福の行為は禁断の行為。やりすぎは慎みましょう。


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